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海の中に沈む

海塚の企画・メモ・キャラ用ブログ

しゅうえん

フリーワンライ

#深夜の真剣文字書き60分一本勝負

お題:しゅうえん

 

 この命も今日で終わらせよう。俺はそもそも生きる気がない。今日までとても長かった。散々邪魔もされたが、面倒な片付けももう終わる。なんとか自室に散らかった服を畳んで仕舞った。 本の間に挟んだ、その、如何わしい本も、山積みにしてきっちり紙に包んで縛ってある。小さな冷蔵庫の中身も空にしたし、見られて困る電子機器はデータをUSBメモリに移してきっちり初期化した。身分証明書の類も全て纏めてすぐ傍に置いてある。
 さて、他に何かすべきことはあっただろうか?
 エロ本は捨てに行って、USBは出先で水没させ、財布と身分証明に使えるものだけを持って出る予定である。そのうえ同居人は外出中。こんな絶好の機会はない。今日のためだけにここまで準備をしたんだから、邪魔されてなるものか。
 急がなければ同居人が帰ってきてしまう。足早に家を出て、途中ゴミ捨て場に雑誌をそっと置いてゆく。如何せん今まで溜め込んでいただけに、捨て方なんぞ知っていないのだ。資源ゴミのほうが良いのだろうか、なんて頭を過ぎったりもしたが、流石にエロ本は抵抗がある。バレなければ良いのだ。
 さっさと頭の外へ追い出して駅へ向かう。切符……は、一番近くで構わないか。遠くまで行きたいけれど、どこまで行くかも決めていない。電車なら乗り越し精算だってできるし。一番安いものを選んでホームに降りれば、図ったように普通車が滑り込んできた。中を覗けば、ここが終点に近いからか、平日の昼間だからか、人がほとんどいない。どこで死のう。
 がたん、がたん、ごとん、がたん……。
「おいこら」
「……は?」
 上から声が降ってきた。唐突すぎて理解が追いつかなかったが、聞き覚えのある、同居人の声。いや、正確にはただの死神なのだけれど。
「勝手に仕事増やすな。帰るぞ」
「ええ……折角ここまでやって死ぬ機会作ったのによぉ」
 ああクソ、バレるなら捨てなきゃ良かった。あれお気に入りだったのに。
「知るかバカ、お前は暫くリストに載ってないから死なれたら困るんだよ。わざわざ報告書書くのだって楽じゃないんだ」
「お前さんもなかなかに自分勝手なことで」
「はいはい褒め言葉か? この死神様がありがたく受け取っておいてやるよ」
「いっぺん死ね」
「はあ!? て、っめわざわざ迎えに来てやったやつ相手にそれか!」
「頼んでねぇし自分のためだろ」
 適当な会話をぐうたら続けながら、次の駅で強制的に降ろされる。乗り越し精算の支払い360円。いいなあ死神って、見えないから金がかからなくて。
 溜息と死神と、ここから家まで歩くのだ。面倒にもほどがある。舌打ちしたら拳骨ひとつ食らって、終焉に向かう電車は降りてしまった。
 17回目の終焉劇、これにて終演。次こそは。