海の中に沈む

海塚の企画・メモ・キャラ用ブログ

出来心

#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
お題:ベッドの下のあの本

 

 ベッドの下の収納スペース。隠したいものを仕舞うのに最適かつ有名なあの場所に物を隠す人間は案外いない。と、思う。だって定番だし。調べられる可能性が高すぎる。少なくともわたしは隠さない。だから見るだけ見て、他の場所を当たろうと思っていたのに。

「……あった」
 そう、あった。どうしてあるんだ。もっとわかり辛いところに隠せよ。定番だろうここは。そんな僕の手に収まっているのは、雑誌。ベッドの下、雑誌、の単語で察せるだろうが、つまりそういう類いであろう雑誌だ。彼はもっと頭が回ると思っていただけに心配しかない。
 そもそもこんなことを始めたのは出来心というやつだ。せいぜい「興味あるからやってみようかな」程度だったのだ。誰が見つけると思うだろうか。そのうえ手元にあるのは人妻だとか、高校生だとか、小さい子だとか、とにかく統一性がない。どうした、なんなんだお前は。結構長い間親友のポジションに収まってきたつもりなのに、俺にはお前がわからなくなってきたよ。
 さてこれ、どうするべきだろう。このまま戻してもいい。むしろそれが最善で、誰も傷つかない結果なのだろうけれど、好奇心もある。好奇心か、理性か。
 悩んだのは僅かな間だけだった。だってこれだけバラバラなジャンルだとむしろ興味が湧く。仕方ないよ。そう、仕方ない。好奇心は猫をも殺す? 知ったこっちゃないね、そんな危険なものでもない。ならどこに躊躇う必要があるっていうんだ。そもそもそんなわかりやすい所に置いておくあいつが悪い。
 思い切ってページを捲る。
「……は?」
 間抜けな声が出た。だってこれは、え、1体なんだ? 目の前に広がるのは官能系でもなんでもないただの白いページ。内側からよく見ると表紙はカバーになっていたらしく、実際の中身は真っ白なノートで。
 ……意味がわからない。
 片っ端からノートを開いていく。どれもこれも真っ白なノートでしかない。いや、いやいやいや。なんだこれは。意味がわからないどころか理解できない。と、全部合わせて数枚、紙が挟まっていることに気がついた。内容は後回しにしてそちらを集める。
 青の1枚目は、「ぬ」。2枚目は「け」。3枚目は「ま」。赤の紙は赤い紙で書き出して、両方を並べ替えて…………。
 並べ終えた頃に後ろで扉の開く音がしたが、気にしない。どうせ部屋の持ち主である名無しだろうし、目の前の言葉の方が重要だ。だって恐らくこれは。後ろの影が答え合わせとでも言うように、並べた言葉をゆっくりと読み上げていく。
「ひっかかったのか」「まぬけ」
「……ふっざけんな、くそったれ!」
 笑う名無しにノートを叩きつけてやった。
 2度と同じ手は食うもんか!