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海の中に沈む

海塚の企画・メモ・キャラ用ブログ

3/19 フリーワンライ

#深夜の真剣文字書き60分一本勝負

 

「孤独が怖いんです」
 彼は言った。
「ひとりになるのが怖いんです」
 彼女は言った。
「寂しいんです、怖いんです」
 彼らは言った。
「何処にいてもひとりで、こわいんです、こわいんです、こわいんです……」
「うっるせえ!」
 布団を跳ね除けて起き上がった。途端、驚いたように声がぴたりと止む。うるさいことこの上ない。
 何なんだ、今は2時だぞ。14時じゃなくて2時。深夜2時。どうしてこんな時間に起こすんだ。殴り飛ばしてやりたい。が、生憎と物理でどうにかなる相手はないので怒鳴る。言葉の暴力とは上手いこと言ったものだ。意味は違うだろうが。
「残念だったな、怖がったり同情したりするような相手じゃなくて。慣れっこなんだよ! 孤独恐怖症かお前らは! 違うだろ? 黙れ! 集団構ってちゃんか!? 違うって言うなら自分たちで傷の舐め合いしてろ、俺を巻き込むな! 鬱陶し……」
 ダァン!
 隣からの大音。しまった。そうだ、今は2時。そしてここはアパート。俺は気が短い。
 ……怒られた。
 悪かった、と心の中で謝りつつ(菓子折りなんかは渡さない)、1度咳払いをして先程より小さな声で言葉を続ける。
「いいか、わかったな? 絶対に起こすんじゃねぇぞ。そこの狸寝入り決めてるパクリ野郎もだ。次に止めなかったらぶん殴る」
 壁を殴られた瞬間の笑い声も聞いてるんだからな。震えてるんじゃねぇクソ。どうせ笑ってるんだろ。
 毒づきながら、壁にもたれ掛かって俯いている2Pカラーの自分、ただの死神野郎の擬態なのだが、に向かって空のスチール缶を投げつける。いて、と聞こえた。知るか馬鹿。お前が片付けろよな、それ。
 さてこれで安眠できる。と、布団に潜り込んだその時。
 自分の携帯からヘビーメタルの音楽が流れてきた。明らかに着信だ。しかし当然そんな趣味はしていない。ヘビーメタル好きの幽霊なんかいるのか叩き割るぞテメェ。
「ねェ、たスけ──」
「人違いだ死ね」
 電源を落とす。人間ならまだ許しただろうが声と同時に聞こえてきたのはノイズという名の呪詛。俺は知らん。いい加減寝かせろ。孤独恐怖症幽霊とこれから呼ぶことにしよう。現実の孤独恐怖症の方がまだ許せるが。
 ああ、眠い……。
 その後のことは、なんとか眠りについたとはいえ、翌朝の授業に遅刻しかけたとだけ。強いて述べるなら、死神野郎は至極愉しそうだったと言っておく。