海の中に沈む

海塚の企画・メモ・キャラ用ブログ

宙へ浮く話

宙へ浮く話

 


僕はある日、何の前触れもなく浮いた。足が地につかなくてバランスを崩して、それでも浮いた。最初はほんの一瞬だったから、数度目にやっと気がついた。ああこれは転んでいるのではなくて、浮いているのだと。理解してからはどんどん浮遊時間が伸びていった。10秒、30秒、1分、20分、1時間。
ついにバランスを取ることはできなかったけれど、今ではずっと浮いていられる。意識せずに浮くことだって可能だ。こうやって、力を抜いて……
ふわり。
ほら、こうして浮くんだよ。どこへだって浮いてゆける。初めは焦りに焦って天井から落ちた。もう思い出したくない。
誰かに語りかける口調で、ぽつぽつと独り言を言いながら浮いてゆく。暇人ですよご名答。自由に空を飛ぶことができたら便利だろうから憧れる。だってこれは飛ぶに近くとも、所詮は浮くだけなのだ。風船のように、シャボン玉のように。ゆっくり浮かび上がって空へ向かうだけ。それでも楽しいから、毎晩のように空を漂うのだけれど。