海の中に沈む

海塚の企画・メモ・キャラ用ブログ

4/8 ゲリラ開催のフリーワンライ(SSS)

ジャンル:オリジナル,お題:荷物は一つだけ 少年少女よ、いざ進め

 

 さてどうしよう。出ようとしたんだ、この世界から。それでも安全圏から出るのはどうにも怖くて、同じ道ばかりをたどっている。一歩、一歩、また一歩。歩みを進めているように見えて実のところ、一定の範囲をループしているだけ。

 鬱蒼とした、誰の気配も、生き物の気配すらない森。森の小道を抜けると小川。やはり生き物のいない川沿いに歩いて海に出る。海に出たらまた森へ。

 自分で決めたことなのに、歩けない。歩きたくない。これじゃ駄目だと思うのに。ここで立ち止まって休息、いや、足踏みをするのも何度目だ? 捨てきれない荷物が多すぎるとも思う。

 あれと、これと、それから。

 ため息をひとつ。歩みも思考も同じところばかりを繰り返している。やはり、駄目なのだろうか。

「なにしてるの」

 驚いた。驚いて硬直してしまった。ここに生き物はいないはずだ。何度も歩いたのだから、見逃すはずがない。

「ほんとうに?」

 タイミングよく疑問を投げてくる相手は揃いの服を着た、九つほどの幼い男女。双子、なのだろうか。

 景色が変わる。僕は荷物を抱えたまま、電車に座っていた。

「本当に、って、何が」

「あなたの思っていることぜんぶ」

 景色が変わったことになんて気に留めないで疑問を投げたのにこの返し。意味が分からない。

「あなたが見ているものがすべて?」

「あなたの目に入らないものはうそ?」

「あなたのせかいが、このよのすべて?」

「せかいはもっと大きいよ」

 交互に口を開く二人組。その間にも電車は元の場所を離れてゆく。僕は一体どこに行くんだ? どこに連れて行かれる?

「あなたの望む場所へ」

 二人組は消えていて、代わりに目の前の誰かがそう言った。今度こそ「何を言いたい」と問おうとしたのに、その途端に電車は停車。無言で出口を指さされる。窓の外の景色は今まで見たのとは違う「海」。一分にも満たない睨み合いで負けた僕は、発車ベルが鳴ったため慌てて降車した。なぜだか逆らってはいけない気がしてならないのだ。

 振り返って電車を見ると、満足げに頷いた人物を乗せたまま、再び走り出し──

「あ」

 荷物を忘れた。手にしているのは大きな鞄。中身は着替えと財布、それから少しの日用品に必需品。必要最低限のものだけで、他のものは何もない。

 海を見据えてため息一つ。今度は延々と続く海岸を歩くことにした。