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海の中に沈む

海塚の企画・メモ・キャラ用ブログ

4/23 フリーワンライ

フリーワンライ

ジャンル:オリジナル,お題:語らう夜に

 

「……造花」

「生花」

 じろりと睨む。実にくだらない。カランと爽快な良い音を立てるグラスの氷さえ忌々しい。空気を読め。完全に八つ当たりだ。冷え切ったこのアルコールだって、まさかこんな状況で飲まれることになるとは想像すらしていなかっただろう。俺だって考えていなかった。こんな、こんな——造花と生花のどちらが魅力的かの話で険悪な空気になるなんて!

 数分前の自分を呪っても、もう遅かった。そもそもこの議題は、どこぞで言う「きのこたけのこ戦争」よりもずっと話題になる、決着のつかない話なのに!

「だから」

 目の前の男が口を開く。すでに出来上がっているからか、酒臭い。……俺の言えた義理じゃないな。お互いもう何杯も飲んでいる。

「造花には永久的に朽ちない、生花にはない美しさがある。永遠に保たれる不朽の美しさ。人間にも他の道具にも表すことできないものだ。いつまでも損なわれない美しさは、永久に人々の記憶に残るだろう」

 酔っ払いの分際でよくもまあ、こうもつらつらと言葉を並べる。それはいい。一向に構わない。しかし、こちらの趣味はガーデニング。生花を貶されることには納得いかない。黄色ともオレンジともつかない灯りに照らされる、ほの暗いバーの隅。向かい合って座る二人席。緩やかなBGMの流れる静かな空間で、ならばとこちらも対抗して口を開いた。やや大袈裟に、手ぶりを加えて。

「たしかに不朽の美しさはあるだろうが、所詮は作り物。偽物の花は生花に劣るに決まっているだろう。それにそもそも、植物というのは生と死を繰り返し時を流れてこそ美しい。造花じゃ到底できないことだ」

「……なんだと?」

 相手の目が据わる。このときだ。このとき、選ぶ言葉を間違えた。さっきまでならまだ穏やかな方向へ修正できる余地はあったのに! 造花の好きな友人にそんな言葉を放つなんて! 火種は向こうだとしても焚き付けたのはこちら、後には引けない。後に引いたら最後、生花を貶されることは目に見えている。彼はそういうやつだ。ああ僕もあいつも、どうしてこう子供なんだ! 酒が入っているからに決まっている!

 悔いたところで仕方がない。アルコールを一杯あおって相手を見据える。こうなったら両者が潰れるまで語ってやろうじゃないか。ぐっとテーブルに身を乗りだして、

「さて」

 先に潰れるのはどちらだろう。