海の中に沈む

海塚の企画・メモ・キャラ用ブログ

煙草

煙草にまつわる話を書こうとしただけ

 

 人を呼んでくるよう頼まれた。部屋の近くで煙草を消してからノックを三回。返答に扉を開くと煙草の匂いがした。はて、この部屋の主は嫌煙家であったはずだ。室内を見回すと、目的の人物と目が合った。用件を伝えるとともに煙草でも吸い始めたのかを問えば、誰がそんなことをするものかと笑い飛ばされた。色素の抜けかけた灰色の髪が揺れる。ならば愛煙家でも招いたのかと問えば、そちらもあっさり否定された。優しい青色の目が細められる。けれどこれは、たしかに煙草の匂いなのだ。疑問に頭を悩ませていると、部屋の主は窓の方へ席を立った。思わず、あ、と声が漏れる。椅子の後ろにあったのは、灰皿に乗った紙巻き煙草。窓が開かれ、風に吹かれて、少しだけ燃える勢いが早くなる。ゆらゆらと漂う一本の煙を見ながら、また質問を投げかける。これは一体どうしたのか。振り向いた相手は、夢の香りだとまた笑った。

 夢の香り。夢の香りとは、何なのだろう。愛煙家の自分が言うのもなんだが、あの有害で苦く鼻につく香りが夢だとはとても思えない。自分ですら自覚があるというのに、嫌煙家がたいした理由もなしに煙草を置いておくのは何故だろう。とはいえ絶対に暴かなければならないわけでもなんでもなく、この出来事はすぐに忘れてしまった。あの言い方はもちろん、嫌煙家が煙を立てていることは不思議だが、所詮は他人。そこまで気にするものでもない。たまたまそんな気分だったのかもしれないし、他人の考えることなどわかりやしないのだ。

この出来事はすぐに忘れ去ってしまった。あの言い方は気にかかるし嫌煙家が煙を立てていることは不思議だが、所詮は他人。そこまで気にするものでもない。たまたまそんな気分だったのかもしれないし、どうせ他人の考えることなどわからない。