海の中に沈む

海塚の企画・メモ・キャラ用ブログ

端的に言って死にたい

シリアスしてない

 

 自分たちは人ではなく、人によく似た存在だそうだ。とはいえ別段変わったことは無い。運動も平均、頭も平均、芸術なんて以ての外。特別な才能もないし、食べるものが変わってるなんてこともない。唯一の違いは、人に「愛している」と伝えてしまえば死ぬということだけ。母から教わったことだ。

 四十か五十か、結婚しても素直でなかった母は、この話をしたあと、死んでしまってもいいと、父に愛を告げたそうだ。父は随分と喜んだが、生きていてほしかったと涙を流していた。死に際の姿は見ていない。ふつりと息絶えたのか、それともロマンチックに人外らしく灰になりにでもしたのか。死ぬ、ということだけを教えてあの人は去ってしまった。

 なんて酷い母親だ! と憤ったものの、そうしたところで何かが変わるわけもなく、あれからも普段通り生活している。強いて言うなら父親は毎日母親に話しかけているけれど死んだことは理解しているし、病院でも精神は病んでいないとの診断だった。迷惑をかけているわけでもないのだからいいか、というのが自分の考え。時々面倒ではあるのは置いておく。なにせ次のことの方がよっぽど重要だからだ。

 これから夢の就活生活、といったところで、うっかり、本当にうっかり言ってしまったのだ。「愛してる」と。恋人にならまだしも友人に。因みに自分は車に跳ねられて死んだ。愛してというほど重い感情は自分も相手も抱いていなかった。嫌いだったとかではなく。いつもの戯れを聞き流しているときに「愛が足りない!」と投げかけられ「うんうん愛してる愛してる」などと答えたのが運の尽き。親に向ける顔のなさに泣いた。あれほど注意を受け、母親が死んだことを知って尚このザマ。というかワードすら駄目なのならそう言ってほしかった。訃報を聞いた父親は事の顛末を聞いて呆れ返っていた。

 死んでわかったことなのだが、どうやら死ぬとその相手に“憑く”らしい。こうして友人の頭上をふよふよと漂う幽霊のような何かに成り果てた自分は、あまりにもな最期にもう一度泣いた。